「あさかぜ」号シングルデラックスに乗った感想文
女性二名で、東京から小郡まで下り列車を使用した経験談です。
春に山口市に用事ができました。旅行案内書を買ってみたら、「東京からのルートには、寝台特急あさかぜもある」と短く書いてありました。ネットで検索をしてみて、こちらのサイトを発見。車内の様子を示した写真や、詳しい情報や、既にお乗りになられたかたの乗 車記があり、たいへん参考になりました。そういう情報を読んでいるうちに、噂のシングルデラックスにとても乗ってみたくなってしまいました。でもひとりで約１４時間は寂しい。ともだちを誘ってみたら、その列車なら乗ってみたかったと言ってくれました。
たまたま出発が土曜日です。春休みはもう過ぎているから、そんなにこんでいないかもしれないとは思いつつ、せっかくだし、友人を誘った手前、確実に切符を取りたかった。どうしたらよいのか、ほどちゃんさんにメールを出して相談に乗っていただきました。アドバイスにしたがって、JTB（しごとででかけた先の池袋支店）に予約を頼みつつ、地元のJRの駅の窓口に、乗車一ヶ月前の朝の十時の十五分前ぐらいに駆けつけ「十時ちょうどになったらコレを」と頼みました。その地元窓口で、案外あっさり、無事とれたときの嬉しかったことといったら！JTBのほうは、その日のうちに電話でキャンセルをするとキャンセル料もかかりませんでした。
４月のある土曜の１９時、東京駅の大丸のデパ地下などで飲み物と食料を仕入れ、友人ともども無事乗車しました。車掌さんがいらした頃には、ちょうどスパークリングワインをあけて、乾杯をしていました。「いいですねぇ」とニコニコおっしゃってくださったので「車掌さんも一杯いかがですか」とお誘いしたら「ありがとう、でもしごと中なのでダメです」と固辞されました。
わたしたちにわりあてられた個室は、ふたつをコネクティングルームにして使うことができたので、オンナふたりには充分ひろびろ。楽しく食べて飲んでおしゃべりしていつの間にか眠ってしまっていました。
夜中にふと眼をあけると、大阪駅に到着するところでした。電車がスピードを落とす感触に起こされたのでしょう。あけっぱなしだったカーテンをあわててしめましたが、近くのフォームにはだ〜れもいませんでした。新幹線の新大阪駅はなんどか通ったり降りたりしたことがありますが、この大阪駅はぜんぜん知らないよその国の駅のよう。遠くのフォームを、車掌さんなんでしょうか、黒っぽいひとかげが重そうな荷物をもって歩いていきました。なんだか『銀河鉄道９９９』の顔のない車掌さんのリアルバージョンみたいに見えました。
朝になってくると、停まる駅がけっこう多くなるんですね。明るくなってからは、うっかり寝入ってすごい寝相を見られないように、レースのカーテンをつねにしめておいて、スキマから、そうっとそとを眺めていました。
１４時間近くもずーっと乗っているなんて、疲れるかな、飽きちゃうかな？ と考えて、時間つぶしに読む本も、たくさん持っていったのですけれど、ナカヨシとふたりでは、アッという間でした。一箇所に腰を据えていることができると、落ち着くし、たっぷり休めて、からだに楽だなぁと思いました。同じ車輌の別の個室のお客さんの中にひとり旅のおばあちゃまがいらっしゃいましたが、確かに、あの広いベッドならば、お年よりにもらくちんだろうなと思いました。
できれば瀬戸内の夜明けを見たかったので、朝早くに起きてみたのですが、……海が、ほんの一瞬見えたかと思うと、すぐにみえなくなってしまいました。おまけに残念ながらクモリ……。こればっかりはちょびっと寂しかったです。日頃の行いがよほど悪いのでしょうか。もちろん山の景色だって楽しくないことはないんですけど、ヒョッコリヒョウタン島みたいなしまかげを、できれば、もうちょっとたくさん、長い時間、眺めていたかったです。個室の窓のほうではなく、通路の方が海なので、うっかりドアをしめていて、海がよくみえる時を見損なってしまったのかもしれません。
小郡駅着が、８時５５分。たまさか到着が日曜日だったので、一時間ちょっとの待ち合わせで「SLやまぐち号」にも乗ることができました。３月２０何日かから今年の運行がはじまったばかりだ、ということで、こちらは運が良かったです。SLは全席指定で、予約しなければダメといわれていましたが、けっこう当日にキャンセルがあったようです。おかげさまで、ぽおーっ！ と怪獣の吼える声のような汽笛と、ケムリのニオイを堪能しました。
帰りは、宇部空港（新しくてとてもキレイです）から羽田へ飛行機を使いました。こちらは、なんとたったの１時間ちょっとです。１４時間対１時間。ゆきとかえりの所要時間が極端に違いましたが、いっそメリハリがついてよかったと思います。値段的にも、早期予約割引などを使うと飛行機のほうが安かったぐらいです。新幹線も考えてみましたが、同じ行程がだいたい６時間ぐらいかかるでしょうか。山口県から東京までは、直通はとても本数が少なく、時間帯をいろいろ選択できるのは、大阪乗り換えになります。いったん「ねころんだまま、ずーっとそこに乗っていていい」電車を体験してしまうと、長時間、狭い椅子にすわりっぱなしになるのはシンドいに違いないので、飛行機にして良かったと思いました。
このたびは、友人とふたり、豪華列車の旅にすっかりあじをしめてしまいました。また何か計画をたてたいと思います。その時はまたこちらのサイトで先輩がたの旅話を参考にさせていただきますので、どうぞよろしくおねがいいたします。