中国出張の際、効率的に時間を使うため、2004年9月9日に北京から上海まで利用した。重厚な北京駅での改札は、中国の他の駅と同様に、ホームへの階段を下りるところで実施される。ホームでは、列車デッキ前で２輌に１名乗務している客室乗務員（スタイルの良い美人揃い）が検札を行う。
車内で乗車券と交換されていた寝台票は、この列車が運転停車を除いて始発から終着までノンストップであるためか行われなかった。ノンストップであることは乗客にとっても荷物管理の面で相当な安心感がある。
列車は北京・上海ともに毎日の19:00から丁度７分毎に19:28まで30分弱の間、次々と５本が出発する。運行は完全な並行ダイヤで、北京・上海間の所要時間は11時間58分である。
機関車と客車はカナダのボンバルディア製のもので白と青を基調にした外観である。機関車は日本のDF200を一回り大きくしたようなスタイルのものが重連で列車を牽引する。客車は電源車を除いて18両編成（長い！）で、これが連日ほぼ満席というから凄みがある。
片道５本のうち、３本では車内食サービス（無料）があるので、それの無い列車よりもお得である。車内食は客室乗務員がコンパートメントまで運んでくる。ビールなどのドリンクは実費である。
部屋は鍵のかかるコンパートメントであるが、各ベッドにカーテンは無い。ベッド幅は70cm程度で日本の２段式Ｂ寝台に酷似している。我々は男３人のグループであったが、同室には中国人の若い女性が居て少々気の毒であった。室内は極めて清潔で廊下のインテリアも簡素ながらスタイリッシュで、ボンバルディアらしい上品な仕上がりである。
走行音は標準軌であるのとロングレールが多いことも手伝って極めて静かである。日本の寝台客車と比べれば加減速時のガタガタもなく、サンライズエクスプレスのＴ車に直線ロングレール区間で乗っているような感覚である。私は天津通過まで覚えているが、その後は上海到着の１時間ほど前まで全く覚醒しなかった（もったいないようだが、そのくらい乗り心地が良い）。
そんなこんなで車内探検どころではなかったのだが、各車輌の廊下の突き当たり部分にＬＥＤボードがあり、そこにしばしば走行速度が表示される。コンスタントに140公里/時（140km/h）程度で走っているから驚異的である。
暫く眠れなかった同行の者からの情報によると、運転停車も１度しか覚えていないとのことであった。もしかすると機関車にもトイレが付いていて、複数交代乗務であるのかもしれない。
マイナスポイントは、寝台にカーテンが無いことと、洗面スペースが極めて狭いことである。大きな車輌であるのに、洗面スペースは日本の寝台車のものより狭いスペースを背中合わせに２名で使用するようになっていて、洗面ボールも小さい。シャワールームの有無は不明である。
ともあれ中国国内の移動にはお薦めの列車である。料金は上段と下段で若干異なるが、下段の場合は北京・上海間が499元（約8000円）で、同区間の飛行機が約1300元（約21000円）であることを考えると格段に安い。
飛行場までのタクシー代金、目的地でのホテル代金を考慮すれば、価格差以上の価値がある。列車好きにとっては、もはや選択の余地が無いと云っても過言ではなかろう。