乗車記とちょっと違うかもしれませんが、トワイライト号には思い入れがありますんで、去年里帰りで乗車した時に思っていた時の事を書きます。
今一路北へ向かうダークグリーンに身をまとうトワイライト号のシングルツインからの車窓から、天王山より舞い落ちる落ち葉が秋の終わり告げていた。そう、やがて冬は確実にやってくる・・・。すでに雪降る札幌にはどの位帰っていないだろう。
シングルツインは、意外と前日に取る事が出来た。香港からの飛行機を降りてその足で関西空港駅で入手した。どうしてもあの汽車で帰ろうと・・・。俺とトワイライト号との出会いは１４年前の春だった。進学で大阪に赴く時に、乗ったのがトワイライト号だった。ホームにナイトトレイン財産はトランクとギターだけと矢沢永吉が故郷広島から横浜へ夢と共に夜行に飛び乗ったように、俺も札幌から大阪へと飛び出したかった・・１８の時だった。その時もシングルツインだった。あの屋根裏部屋的な空間がたまらない。
あの頃は不安と期待で、とにかく興奮のままの旅路だったと・・、ちょうどダイナープレヤデスにて飲んでいたコーヒーのほろ苦い味が、あの頃を呼び戻していた・・・。我がトワイライトエクスプレスは琵琶湖に別れを告げさらに北進する。やがて空に重くのしかかる雲に冬を感じそして北陸の地に踏み入れた事を教えてくれる。
場所は、サロンデュノールに移す。他の乗客と北海道の情報を話していたらあの頃もこうしてここにいて話していた自分がいた事を思い出す。大阪行き最後の道内の車窓・・江差線を走る列車にいつまでも追いかけて来てくれる函館山にまるで旅立つ俺にエールをくれる友や親兄弟を重ねていた。あまりにも深く思っていたのか、乗客の質問に函館山と答えていた。道内一番のおすすめは・・？に・・。
パブタイムにスコッチを注いでもらう。豊富なアラカルトメニューからチキンの薫製などチョイスして、夜のダイニングカーでの一時に酔いしれる。ほてった体に熱いシャワーを降りかけてやると、軽いジョイント音が深い眠りの世界を約束してくれる。トワイライトエクスプレスは、確かに俺をあの土地に連れ帰してくれた。それは朝のダイナープレヤデスで出されたプレーンオムレツのほんのりとした甘さと窓に踊る朝日に照らされた有珠だった。
あの頃不安に怯える１８の俺を無言で大阪の街に放り出したトワイライトエクスプレスは、９時７分やはり無言のまま冬の札幌へ俺を送り届けてくれた。札幌駅は駅前は変わったがホームは変わらない。ただ変わったのは、１８の俺は３２の私になっていたことだった・・・・。
FIN