私たちの「トワイライトエクスプレス」の旅
＜２００４年９月２３日〜２４日、２号車Ａ個室３番スイート乗車記＞
札幌駅にて「トワイライトエクスプレス」に乗車したのは前日午後のことです。目的地の京都駅に到着したというのに、私も妻もその時の気持ちは、「降りたくないなあ」でした。ゆったりと流れゆく日本海沿岸の車窓の風景、そして、好きなＢＧＭに包まれての旅は、結婚２５年と入社３０年の節目を記念しての旅でした。
列車の中だというのに、ホテル並みのツインベット、ソファー、トイレ、シャワー、冷蔵庫、テレビ、屋根まで伸びる大きな窓とレースのカーテン。隣の車両はレストランカー「ダイナープレヤデス」、そのまた隣はサロンカー「サロンデュノール」。充実した設備と心温まるウェルカムドリンクやディナーなどの持てなしと要所名所でのアナウンスをしてくれる乗務員・スタッフに囲まれながらの豪華で優雅な旅は、２２時間も乗っているというのにぜんぜん飽きません。このまま日本一周してほしいと思うほどです。
前日は、自宅から仙台空港まで娘に車で送ってもらい、早朝の便で新千歳空港まで飛び、札幌駅にてトワイライトエクスプレスに乗車しました。この列車を知ったきっかけと運良くこのチケットが入手できた経緯を少し書いてみます。単身赴任先の東京から仙台の家族のもとへ帰る週末の東北新幹線の中で、持ち帰り自由の冊子を手に取って見ていたとき、とある有名小説家夫妻の豪華寝台特急「カシオペア」（上野〜札幌間）Ａ個室スイートの乗車記が目にとまりました。その優雅な旅に強く惹かれるものがあり、家に着いて早速この話を妻にしてみました。
ところが、「北海道も東京も行ったことがあるので別の所がいい。」という素っ気ない返事です。傍らでこのやり取りを聞いていた息子が、「それじゃトワイライトエクスプレスもあるぞ、大阪〜札幌間の日本海側を走る超豪華寝台特急だぞ、でもチケットは取れないだろうな。」と一言。何でそんな事知ってるんだと問いつつ、インターネットで調べて見るとカシオペアよりもずっと長距離で、かなり人気の豪華寝台特急であることを知りました。妻には苦労かけっぱなしで、「家庭を顧みないオヤジの現在進行形」なので、罪滅ぼしを兼ねた旅と言った方がよいかもしれません。当初はスイスかオーストラリアへの海外旅行をと考えていましたが、「世界○○百選」などの特集編テレビ番組もあって行き先に目が眩み、また、東京から山形へ４月に転勤（またもや単身赴任１２年目）もあって、計画もままならない状況でズルズルと８月を迎えてしまいました。
その後、ずっとこの寝台特急のことが気にかかっていたので、「９月１８日（土）から２６日（日）までの飛び石連休の中で、もし札幌発のチケットが取れたら３泊４日で京都にでも行こうか？」ともう一度持ちかけたところ、「どうせ取れないでしょ、取れたらね。」とのやけっぱちの返事が返ってきました。
１カ月前の発売当日になって、ＪＲ山形駅内のびゅうプラザ山形に頼みに行ってみましたが、しかし、「９月１８日はあいにく既に全席満席です。」との言葉が返ってきました。残念やはりそうかと思いつつも、「９月２３日までの間で何とか取ってほしい。妻との記念旅行なのでできればＡ個室のスイートを。ロイヤルでもＢ個室ツインでも良いので。」と依頼して吉報を待つことにしました。
しかしながら、翌日からの電話は、「残念ながら今日も取れませんでした。この列車のチケット確保は難しいようです。でも一生懸命頑張ってみます。」との返事が続きました。もう完全にあきらめかけていた最終６日目に、「９月２３日のＡ個室２名様のチケットが取れました。」との連絡が入りました。一瞬耳を疑い、「えっ、ほんとですか。Ａ個室はロイヤルのことですか。もしかしてスイートですか？」と聞き返してみたところ、「スイートです。」との夢のような返事でした。喜び勇んで妻に連絡し、仙台〜札幌行きの航空券と京都でのホテルの予約、そして「ダイナープレヤデス・ディナー」の予約をしたことは言うまでもありません。
青函トンネルが開通して運行開始１５周年記念を迎えたトワイライトエクスプレス。しかも、プラチナチケットと呼ばれる限定２室のスイートに、結婚２５年を迎えた私たちが希望した時期に乗車できる幸運は、ただの偶然とは思えない何かを感じています。妻も「何か裏の手を使ったでしょう？」と疑ったままです。列車に乗るだけの国内旅行のために飛行機で飛び、飛行機で帰ってくるという理解し難い行為に思えるかも知れませんが、海外旅行よりもずっと価値ある旅だったと思っています。お蔭様で京都での２日間も楽しく充実したものとなりました。一生懸命に手配していただいたびゅうプラザ山形の皆さん、そして乗務員・スタッフの皆さん、想い出に残る最高の旅を本当にありがとうございました。