出雲の廃止後・・おれはずっとサンライズに乗ることを躊躇っていました。出雲への想いがまだ、とても強かったからです・・。しかし、先日東京への出張の帰路にサンライズ出雲を選びました。出雲号への想いを本当に想い出にするべきだ！・・などという声が東京駅のどこかから聞こえてきたような気がしたからです。
・・ちょっとカッコつけすぎましたが、7月のある日21時00分おれは東京駅9，10番線ホームに「サンライズ出雲」の寝台券を握り締めつつ佇んでいました。21時になると以前なら隣のホームには「出雲」がその旅立ちを待ちつつ客車を暖めているはずだったのですが・・。
そんな物思いに耽っているうち、今回の旅の友・・「サンライズ出雲」の入線です。。ホームは会社帰りのサラリーマンが多数でしたが、まっすぐ家路につく人々というより一杯ヒッカケテという感じの人々が多かったのには、寝台特急の出発時間の変化にあらためて気づかされ、寂しさが込みあげました。
今回、おれは一番後ろの車両の上段に位置する山側のシングルを指定して寝台券を取りました。これは、すれ違う寝台車を見るためと自分の部屋から宍道湖をゆっくりと眺めるためでした。車内に入ってまず気がついたことは、「匂い」でした。明らかに客車のそれとは異なるが電車とも異なる独特な匂いといいますか・・。とにかく自分の部屋に入り荷物を整理しつつ発車までの間、室内のスイッチ類の確認を行いました。
シングルの室内は広くはないのですが、うまく考えられているなとは感じました。それはライトの配置や木目調の落ち着いた雰囲気のおかげなのでしょう。そうこうしているうちに出発です。これといった振動も衝撃もない静かな発進がサンライズのイメージを↑させました。カーブ時、一番後ろの車両に乗っていたおれは疾走する10両以上の車両を後ろから眺めることができました。サンライズ瀬戸・出雲の連結車両の疾走ぶりはちょっとした感動でした。ところどころ上段・下段の明かりが不規則に点燈しているサンライズの車両は、おれに疾走する銀河鉄道を想いおこさせてくれるほどの幻想的なものでした。
一番後ろの車両に乗るのは、おれとしてはものすごくオススメです。シャワーも堪能しました・・といっても、あさかぜなどとほぼ同じタイプのもので別段感動するほど革新的な設備というほどのものはありませんでした・・。しかし、汗も髪も洗えて気持ちは良かったです。シャワーカードにはサンライズの図柄が入るちょっとしたお洒落なものでした。
久しぶりに寝台特急に乗車し興奮気味だったおれは子供のようにはしゃいでしまい・・気づいたらサンライズは京都付近をスピードを上げて跳ばしていました。いくつもの線路が並ぶ京都付近を足早に駆け抜けていくサンライズの勇姿は寝台特急の世代交代の象徴のような・・勇ましくもあり、一抹の寂しさもあり・・なにか複雑な心境でした・・。
・・いつのまにか眠りに入ってしまったおれが目を醒ましたのは岡山を過ぎた新見付近でした。伯備線は、その沿線のほとんどを山に囲まれた路線で時折川が現れる程度の車窓は、おれにとって退屈なもので「早く米子に着かないかな〜」などと部屋のベッドに腰を下ろし物思いに耽っていました。無理をしょうちで言いますが・・サンライズにも山陰本線を走ってほしいです。おれは山陰本線の車窓が大好きです。もっと望めばＤＤ５１の重連に牽引されて・・。そうこうしているうちに右側に線路（山陰本線）が合流し・・・・米子到着です。
この辺りに来るともう、おれには庭のような感覚です。しかし、やはり普通列車や昼の特急からの車窓とは異なる感覚がするのは長旅を共にしてきた寝台特急ならではの嬉しい感覚でしょうか・・。こころなしかスピードを落とした列車から流れていく見慣れた風景を横目に山陰本線の振動を感じているとだんだんと線路が高架していき・・松江に到着です。松江にしろ、出雲市にしろ、なぜこのような趣のない駅舎ともいえないような建物にしてしまうのでしょう・・。確かに、特急列車乗り入れのためには長うホームは必要かもしれません。
しかし、なにもこのような高架化させる必要性があるのでしょうか？「出雲」の廃止といい・・おれは近年のＪＲの考え方にはとてもついてはいけません。。幸いこの日は梅雨の晴れ間で最高な宍道湖の風景を堪能できました。子供の頃から遊んでいた宍道湖が昔の趣を捨てていなかったのにはいつも安堵します。「出雲」乗車時、出雲に到着する頃には乗客も数人になってしまっていたものでしたが、サンライズも出雲まで乗車する方は多くはないと専務車掌さんがおっしゃっていました。その言葉のとおり、出雲で下車したのはおれを含めて15名いたかどうか・・。平日とはいえ寂しい限りです。。しかし、「サンライズ出雲」の旅は想っていたよりも壮観なものでした。この現代社会においてこのスピードは魅力のあるものだといってよいでしょう。こうして、おれの初めてのサンライズの旅は終焉を迎えたのでした。読んでいただいた方、どうもありがとうございました。