10月の函館旅行の最後にはやぶさに乗りました。
旅行最終日ということで疲れ果てていた私は食料とコーヒーなどを買い込むと入線時刻少し前にホームではやぶさ（富士）を待ちました。
はやぶさの良い所は私の居住地の近くの駅で停車してくれる所と、下りの場合は発車時間が6時と、他の列車より随分早いことです。いつもではありませんが、私が上京する時は大抵夕方までに用事が終わるので、例えばサンライズなどに乗る場合、お金がない私は列車に乗るまでの時間潰しに苦労したりするのですが、はやぶさの場合、6時には寝台で身体を休ませることができるので大いに助かります。
いよいよはやぶさが入って来て、乗客が三々五々乗り込んでいきます。ざっと見た感じ開放寝台は富士もはやぶさも下段が3割程度で寂しい限り。しかし、ソロは6割程度の占有率です。
私も割り当てられた3号車3番（下段）の部屋に入ります。これまで上りの富士を何度も利用したことがあり、星空を観ながら眠るのが好きな私はいつも上段のソロを指定していたのですが、今回は一度も乗ったことがなかった「はやぶさ」のソロの切符を取ることに気を取られ、ソロ上段の指定をするのを忘れていました。切符を受け取った後、それが下段であることに気づき、どうしようかと少し考えましたが、なりゆきのままで良いかと思い直し、上段への変更をせずにいたのですが、はっきり言って下段の方が快適なような気がしました。下段だからといって景色が楽しめないことはないですし、上段と違って階段がないので広々とした印象です。更に言えば当日は雨だったので、星空を仰ぐことなど不可能でしたし。
私は今回の旅で日本海、あけぼのとシングルデラックスに乗ってきたのですが、シングルデラックス特有の快適性などを度外視して機能のみでを考えるとき、個人的には個室ならソロで十分という気がしました。
列車は定刻どおり、乗客でごった返す東京駅を離れ、少しずつ速度を上げていきます。しばらくは通勤列車優先のためか特急列車にも拘わらず普通列車にまで抜かれたりして少し悔しい気持ちにもなりましたが、列車は順調に進んで、家路を目指す乗客が列をなしているホームを幾つも通過していきます。街には光が満ちあふれ、夕暮れ時独特の優しい時間の中にいる私を癒してくれるようです。銀河に乗った時にも感じましたが、東海道の賑やかさは特別ですね。街から漏れる小さな光が途切れることはなく、ひときわ光が大きくなると思うと列車は駅を駆け抜けて行き、再び小さな光に戻る - という繰り返しで、いつまでも飽きることなく景色を見ていました。夜にともる街の灯を遠くから見るのって本当に良いものです。
そうこうするうちに列車はあっという間に名古屋に到着しました。もうすぐ日付が変わるので、この先の停車駅には人影もあまりないだろうと思い、そろそろ眠ることにしました。
夜中に１度ふと目が覚めました。外を見ると岡山の少し先の里庄駅を通過したのが見えました。しかし、まだ辺りは暗く、いくら何でも起きるにはまだ早いと思い、再び目を閉じました。
その後はうとうとしながら時を過ごし、広島駅に着く少し前で完全に起き上がりました。広島駅に停車しましたが、流石にホームに乗客の姿はありません。しかし、陽が昇るにつれて少しずつ街に朝が訪れ、今日といういつもの１日が始まっていく様を見ることができました。私の旅もあと少しでお仕舞いです。
その後、列車はこまめな停車を続けていきます。ホームにはそれぞれが所属する場所を目指す人たちの姿が段々増えてきました。山口は私のホームグラウンド。外の景色にもはや珍しさは感じませんが、寝台列車って本当に楽しい、と感じつつ時を過ごしていました。
ついに列車は下関に到着し、私は朝のホームに降り立ちました。今まで何度も乗った、私にとって何の目新しさもない列車でありながら、改めてはやぶさ・富士は良いなあと感じ、更に終点まで乗って行けたらどんなに嬉しいだろうと思いつつ、ホームに立ち尽くして列車が離れていく様をずっと見送りました。そんな私を乗務員室の窓から顔を出して指さし確認をしていた車掌さんが見つけ、不思議そうな表情を浮かべておられましたが、瞬時に状況を悟ったようで、少し表情を崩して私を見つめかえしてくれたように思いました。私の夢の時間は幕を閉じ、これからすぐに職場に直行です。
夜行列車が廃れて行く中で、東京 - 九州間を繋ぐ列車は、はやぶさ・富士だけとなりました。上野（大阪） - 北日本を結ぶ夜行列車群と比べるとき、色んな意味で寂しい気持ちになりますが、絶対に廃止してほしくない列車だとしみじみと思いました。（料金を下げるなり、ハイグレード車を投入するなりして何としてでも存続して欲しいと思います）