１月下旬に所用で姫路に行く機会があり、あかつきを利用しました。既に3月で廃止されることが決まっていましたので、最後の乗車になることを意識して切符を手配しました。
今まであかつきではシングルデラックス、ソロ、レガートシートを利用してきたので、この度は初めてとなるシングルツインに挑戦です。電話で予約をしたのですが、私の希望する瀬戸内海側のシングルツインは3席しかないにも拘わらず、あっさりと切符は取れました。あともう少しで廃止だと言うのに、少し拍子抜けがしました。
当日は深夜0時半過ぎに新山口駅に到着しました。当然の如くというか、深夜の駅は閑散としていて、あかつきに乗り込む客は私１人だけのようです。今回に限らず、今までもずっとそうでしたが。
ホームに降り立ち、自販機で買った温かい紅茶で暖を取りつつあかつきを待っていましたが、案内板によると列車は6分ほど遅延しているとのこと。それでも、吹きさらしのホームで待っていた私の身体が凍えそうになるころ、漸くあかつきが重々しい音を軋ませてホームに入ってきました。
列車の中に足を踏み入れると暖房のお陰で身体は直ぐにホカホカに。しかし、途中に通った開放寝台の車両では相変わらずガラガラの状況で寂しい限りです。
いよいよシングルツインの個室に入りました。既に「ほどちゃんの島」さんで写真を見ていましたので、予想どおりという印象。B寝台個室ということですが部屋の広さは十分です。また、レール方向に配置されたベッドは景色を観るには好都合ですし、座席兼用のの寝台は初めてだったので、珍しく感じました。上段のベッドも覗いてみましたが、こちらは少し狭そうで、階段の使い勝手が悪そうだなどと思ったものの、時間も遅かったので見学は早々に切り上げました。
乗車後すぐに検札があり、車掌さんからカードキーを貰いました。このカードキーが入手できるということもシングルツインを選んだ理由の１つだったため、とても嬉しく思いました。あかつきを偲ぶ良い記念になることでしょう。
着替えを終えると、寝台に足を伸ばして窓から景色を観ていました。深夜ということで街の灯も少なく、ほとんど真っ暗でしたが、あかつきから観る景色もこれが最後だと思うと勿体なくて眠るどころではありませんでした。
やがて完全に灯を落とした防府駅を過ぎ、瀬戸内海の側を走っていた時、あまりにスピードを落としすぎている気がして少し疑問に思いました。更に徳山駅では運転停車をした模様。列車は当初から6分近く遅れていましたが、回復できるのだろうかと心配になりました。
この度、本来であれば姫路駅で下車すべきところを、一足伸ばして大阪まで行き、直後に大阪駅に入ってくる銀河を撮影して再び姫路駅に引き返す計画を立てていた私は、あかつきの遅延回復を祈るばかりでした。
その後のあかつきは心地よい音と振動とともに快調に飛ばしました。新山口 - 岡山間は若かりし日々に青春18きっぷで何度も往復したことがあったため、夜であっても自分がどの辺りを走っているのかが大体分かり、何だか楽しくなります。
できればずっと起きていたかったのですが、暖かい部屋とレールから伝わる規則正しいリズムが心地良いために猛烈な眠気に襲われた私は午前2時半過ぎに眠ってしまい、途中、広島駅で運転停車をした際に目覚めた以外は、倉敷駅を発車するまで眠っていました。
列車は岡山駅に到着しましたが、遅れは10分以上と逆に大きくなっており、回復はできなかったようです。これからは通勤時間帯に入りますから、大阪駅への定刻到着はあり得ず、銀河の撮影も無理だと諦めました。後はあかつきでの乗車を堪能するのみです。
その後、上郡駅を通過中にホームに入ってきたばかりらしいサンライズとすれ違い、少し得した気分になりました。更に相生の街を過ぎ、列車は姫路へと進んでいきます。まだ夜はなかなか明けませんが、通過して行くホームには既に通勤列車を待つ人たちの列が見えます。
天気予報では雨ということで気をもみましたが、幸運にも空には雲が少なく、美しい朝日が徐々に真新しい風景を映し出して行きます。
明石大橋の手前でおはよう放送があり、列車は約20分遅れているとアナウンスがありました。当初、大阪駅から「スーパーはくと」に乗って姫路駅に戻ることを考えていた私でしたが、予定を繰り上げて三ノ宮駅で「スーパーはくと」を捕まえざるを得なくなりました。あかつきとも、もうお別れです。
私はシーツや毛布などを畳んで改めて個室を見渡し、心の中でさよならを告げると、吐く息が真っ白になるほど冷気が満ちている三ノ宮駅に降り立ちました。最後にEF66の雄姿をカメラに収めたかったのですが、列車の先頭はホームの端にあり、記念撮影はできませんでした。
私は呆然としながらホームを去っていくあかつきを見送りましたが、通勤客でごった返すホームで独り、最後にあかつきに乗ることができた幸運を反芻しつつ、しばらくしてやってきた「スーパーはくと」に乗り込んで姫路をめざしました。