急速になくなっていく西の寝台列車。その中で備後地方から九州にアクセスできる列車には乗ってみたいと思いつつ機会が得られなかったので、「ダメもと」でみどりの窓口に行くとあかつきのソロが取れました。今回はほぼ思いつきでした。
前夜2月29日に普通列車であかつきの停まる直近の三原まで一旦あがり、一度改札を出て高架駅下のローソンで晩酌などを買い込み待ちました。(切符は一応最寄り駅〜三原(反転)〜長崎と購入しましたが二枚組でした)23時半を過ぎると貨物以外の列車の往来がない三原駅は高架であることも手伝って寂しいモノです。乗車客はどうやら私だけのようです。ホームには一切人影無し。
途中駅ということで0:17分に入線してきた「なは・あかつき」。が、ビックリしました。なはのソロ車輌は外板がボロボロ。腰を砕かれた思いでした。あかつきは痛みこそ見受けられませんでしたが古い車輌をそこそこに使ってという雰囲気でした。
乗車して程なく発車の慌ただしさは途中駅ならでは。コレで三原駅もひとときの眠りに就きます。
個室はソロ上段。廃車されるのがもったいないほどこちらは綺麗でした。階段を内包した狭い個室は不満を持つ人も多いようですが、私は「秘密基地」の趣を感じて逆に気に入りました。タダ寝台をセットすると外から中が見えない状態なので、防犯上はヨシとしても検札までお預け。その検札は発車程なく、頼兼トンネル(三原駅西すぐ)通過直後に通った車掌を捕まえてすぐ済ませました。
あとは戸口のクッションを降ろして、長崎までの秘密基地(笑)です。宵どころか夜半も既に回ってるので本当な寝る所ですが、今回は住み慣れた近所をごっそり夜行列車で通過する状態だったので、そこを晩酌で堪能しました。だいたい2時前後。ハイデッキと天も仰げる湾曲窓でパノラマ気分。115系しか走らない近所でこの光景は堪能に値しました。闇に融けていましたがそこは近所の知己。太田川放水路に掛かる広島高速4号線橋や自宅付近、宮島口を写りもしないのにデジカメで撮ってました。車内ラジオは機能していたようです。が、今回ワンセグ電波ハントを兼ねてたので確認だけにしました。
一段落し手荷物を片付け寝台メイク。シーツは面倒なので敷きませんでした。いびつな形の寝台ですが私は最低幅は充分に思いました。山口県下から就寝に充て、目が覚めたのは図ったように未明の下関。此処で1つ大失敗が。手荷物を足許の台に乗せていたんですが、晩酌&朝明軽食を不覚にも空調ダクトの真ん前に置いてたことにこのとき気が付きました。朝飯用に買ってた紙パックのドリンクが膨張&HOT状態に。JRさん、(ムーンライトの)冷房は容赦なく切るのに暖房は利きすぎです。わたし逆の嗜好なんですが。
夜の明けきらぬ関門海峡と門司を見届けてまた横になり、鳥栖まで無理繰り寝付いていました。
さて、到着が9時前というのが有り難い話で、この時間から車窓が堪能できるというのは嬉しい限り。タダパノラミックな窓ですが夜半は暖房の結露、夜が明けると思いの外煤・露汚れが酷かったのは辛いです。それでも肥前平野の広大な耕地、有明海の入り組んだ湾岸や集落、裾野の雄大な対岸の雲仙岳。広島って狭いなぁと思うばかりです。マァ諫早の干拓閘門という問題スポットもそのうちの一景ですが。
特急と言うことで待避停車は少なく押さえられてましたが、手前の現川ではまとまった停車。此処ではにわか・プロカメラマン入り乱れての撮影会場になってました。途上でも三脚を多見し、別れを惜しむ人の多さも見受けました。
そして長崎市街はちょっともどかしげにゆっくり到着。9時という時間は何処に行くにも困りません。タダ帰途はその日のウチに18切符としたので、観光は午前中だけ。広島人としては市電に乗って爆心地と平和公園に往き、徒歩で長崎駅に戻るとんぼ返り状態です。観光はまたの機会に。
タダこの日はあかつきのイベントが催され、乗ってきた車輌はすぐさま撮影会場になり、その車輌で惜別遊覧運転が行われてました。帰途、現川で待機するあかつきを見送ることになりました。
今回乗ってみて、惜別や旅情という面もさることながら、この列車は「個室の展覧会状態」で運行されており、資産的な惜しさが先に立ちました。今までは列車名が無くなっても車輌自体はどこかにコンバートされることが多かったんです。しかしこの3.15改正は実質JRWの寝台恒常客車の葬式みたいなモノになったのでとうとう乗ることの出来なかったAデラックスやデュエットは特に惜しい気がしました。いつぞやの下関ふくふく号(B寝座席)のようにムーンライトなどでご祝儀運行でもしてくれればJRに対する冷ややかな視点も薄らぐのですが。